時の中に立ち止まる
初めて見た桜の木に再びピンク色の花がついた。
短い春休みを終え、1年生から2年生へと進級し
1年間歩いた通学路を2人で歩き
校門をくぐり、運動場へと足を向け
各クラブが朝錬を始める様子を邪魔にならない
毎日いる場所に立ち、サッカー部員を見ていた。
指示を出す大きな声
グラウンドから起こる砂埃
蹴られ転がるサッカーボール
1年前から見続けて来た風景
新学期が始まり、クラス変えがあったものの
友達になった玖珠とは同じクラスになり
そして、高山昭栄とも同じになった。
毎日が楽しく、騒がしく過ごす中
季節は4月から5月になり
薄いピンクの花が無くなり変わりに
新芽が青々と生え揃った頃
1通の手紙がの元へきた。
「・・・・ウソ」
封の切られた封筒に手紙を戻し
流れていたラジオを止め
無音の中で目を閉じ手紙の内容を思い出す。
『武蔵森から桜上水に転校する事にしました。
でも、サッカーを辞めません。
武蔵森じゃなくてもサッカーは出来ると思ったんです。
心配ばかりかけてごめんね』
サッカーがしたいから・・・
それの為に、どれだけ頑張ってきたか知っている
逃げたり、投げ出す事が大嫌いな人が出した答え。
お父さんもお母さんも何も言わなかった
たぶん将の考えを理解している
だったら私は応援をしてあげればいい。
アノ時の様に・・・
閉じていた目を開けると
蛍光灯の光が目を刺す様に入り、一瞬眩しく数回瞬きをし
目を慣らすと、置いた手紙を視界に入れ
体中に広がった重い空気を吐き出すと
引き出しを開け便箋を出すと
言葉を選び文字と変え書いてゆく。
ゆっくり便箋を折り、
新しく知らされた住所を書かれた封筒に入れ封をする。
今度こそサッカーが出来ます様に・・・
部屋の電気を消し、入ってくる月光に祈りを込めベットに入った。
毎日同じ時間に起きて、朝食を取り
学校へ向かう為、家を出る。
玄関先でカズと合い
毎日通っている通学路を歩いて行く
途中にあるポストに手紙を投函する
「すみません・・・」
「いや」
申し訳無さそうに誤ってくると
手短に返事を返したカズはの様子にため息を付くと
促す様に先に歩き出した。
学校に着いてからもは考え事をしているのか
目の前で広げられているサッカーの風景を見ている様でまったく見ず
どこか上の空の状態にカズは2度目のため息を付き、
また2人の様子に城光も人知れずため息を付いた。
朝錬終了のチャイムが鳴り響くと
グラウンドから人が居なくなり、
昇降口には教室に急ぐ様に駆け込む生徒の中
どこか頼り無さそうに歩くの横にカズが歩き
半歩後ろを城光が歩く中、1人が階段を上る為に
手すりに捕まった時に
「、考え込むと体に悪かとよ。
なんでも程々がよかよ」
城光からの言葉に振り向き、苦笑すると
「気を付けます」
一言残し階段を上って行った。
階段を上り廊下を歩きながらも城光の言葉を思い出し
苦笑しながらため息を付くと、教室内から
大きな声で名前を呼ばれ、下を見ていた顔を上げると
笑顔と大きな手を振って出迎えられるが
すぐさま、その行動を制止する声がかけられ
いつしか男女の口喧嘩に発展し始める
毎日繰り広げられる光景に、自然と笑みが浮かび
「おはよう。、昭栄君」
今日も元気だね
明るく挨拶をし、恒例になっている喧嘩を止めると
2人同時に挨拶を返し、他愛もない話に花か咲くものの
担任の登場により話は途切れ席に付き
2・3話を聞き、授業開始のチャイムを聞き
教科の先生が来るまで、至る所で話が盛り上がる。
そんな中、出来るだけ声を小さくして話をし始めた。
「昭栄君、最近オカシイと思うんだけどはどう思う?」
「どうて、悩やんでるのは確かやけんね」
「だよね・・・・
相談とかに乗って上げたいんだけど原因がわからないし・・・・」
「昭栄はのー天気やけん気にせん方がよか。
あれでも男や自分で解決するやろ」
「話を聞いてあげない方がいいの?」
「弱みは見せん男やけんね」
「そうなの?」
「腐れ縁の私がソウ言うや、ウソじゃなか。
ソレよりは何を悩み中なんやろ?」
「え?
悩んでる様に見える?」
頷き、言葉を言おうとするが、先生の登場で
話は切られるものの
「放課後、相談に乗ってもらって良い?」
授業中にかけられたの言葉に
見つからない様に、了解と返す
いつもと変わらない、教室風景
授業と休憩を交互に繰り返し
なんとなく過ごしているといつしか放課後になっている。
少し傾きかけた太陽の中、それぞれが部活へと行く中
「、何か悩み事があるんやろ?
遠慮はいらん、俺にドンと打ち明けるとよ!
溜め込むのはイカン」
「う、うん。何かあったらすぐ相談するね。
昭栄君も悩み事があったら、すぐに言ってね」
聞く事ぐらいしかしてあげれないけど・・・・
手を握られ、真剣なまなざしで言われる言葉に
頷き言葉を返すと
「昭栄!さっさとクラブに行くとよ
チコクは後輩に示しがつかんとよ」
「もう、そげん時間んと!?」
握られていた手を離し、カバンを持つと
走りさってしまい、あまりの動きの早さに呆然と見送っていると
に座る様に言われ
お互い机を挟み向かい合うと、
時計の時を刻む音が教室に響き、沈黙の時を急かす様に
大きく聞える中、決心が付いたのか深呼吸をすると
が口を開いた。
「昨日、将から手紙が来て武蔵ノ森を辞めて
桜上水に転校したて書いてあったの」
「武蔵ノ森?
確かサッカーが強い学校やった所やね」
打倒、渋沢!
と、カズの話を聞いていたが記憶を引き出
確かめる様に言葉を作る
「うん。
そこのサッカー部の3軍に入っていたんだけど
急に転校するて書いてあって・・・・」
3軍という聞きなれぬ言葉に眉を寄せるものの
の言葉に耳を傾ける
「転校してもサッカーは辞めないて・・・
でも、転校してサッカー部に入っても武蔵ノ森に居た事には
変わらないし・・・・その、上手く人付き合いが出来るかな
て、気になったの・・・」
言葉を言い終わると視線を落し、俯いてしまったに
「その、お兄さんは人見知りする人じゃなかよね?」
手紙が来るたび嬉しそうに微笑みながら話してくれる人物を
思い出しながら話を進める。
「うん。
人見知りはしないかな・・・優しい人だよ」
困っている人がいると手を差し伸べれる人なの
目を閉じ思い出す様に言葉が作られていく
「心配、せんでもよか気がするけど・・・」
聞く言葉に心配は要らない気がしてならないは
の悩んでいる所がつかめずにいると
「武蔵ノ森にいたのがね・・・・
なんでもトップクラス人達が集まる学校らしいから
桜上水のサッカー部の人達にイジメられないかな?
て、思って・・・カズ先輩も打倒渋沢て言ってるし・・・・・」
「その渋沢さんがいる所て、
武蔵ノ森やったと!?」
いまいち、カズの言葉が理解出来ていなかったにとって
の言葉は驚き以外の何も出もなく
何に悩んでいるのか理解が出来た。
「あ〜、大丈夫やと思うけど・・・・
私やとなんとも言えなかとね・・・・」
なんやったらカズ先輩に聞いてみては
東京と言う情報だけの世界の人間関係に
想像が出来ず、ハッキリとした言葉が出ぬまま
から聞かされた人物像を思い出し『大丈夫』としか言えないのは
マズイと思い先輩でもあるカズの名前を出し
相談することを促した。
なにより、朝からのの状態に心配をしていないはずがないし
気にしていても、本人が言うまで聞き出すことのしない性格のカズは
ひたすらが打ち明ける事を待つしかない。
そんなのは流石にキツイだろう
と、思う。
再度、カズに相談する事と言い
教室から出て行くを見送る
「もカズ先輩も大変やねぇ・・・・」
以外居ない教室に響き渡った。
その帰り、の助言通りカズに相談すると
「大丈夫やろ」
と一言返って来た。
苦笑しながらも、
「そうですね」
と返すに
「そや」
と、力強く返し
その日は終わりを告げた。
そして、次の日に
「高山昭栄はサッカー部に入る事になったとね!」
いつもの大きな声に、口を開けて驚く事になる。